伊藤真乗(1906-1989)は、真言宗醍醐派総本山、京都の醍醐寺で真言宗の奥義を修めた後、
釈尊の遺教である涅槃経を所依の経典とする一宗を興し、
仏教教団・真如苑の開祖として、日本の仏教界のみならず、広く世界の宗教界に知られた存在でした。
また一方で、伊藤真乗は、本尊の巨大な涅槃像を自ら謹刻し、“昭和の仏師”と呼ばれる側面を持っていたことを忘れてはならないでしょう。
その天性による創作は、釈迦如来、阿弥陀如来、聖観音、不動明王などの仏像に結実しました。
それだけではなく、その創作は、親交を結んだ人々の胸像や彫刻作品、刻字、書、写真など、多岐に渡る膨大なもので、
こうした作品の制作自体が、即ち、修行のひとつの姿でもあったことを偲ばせるものとなっています。
展覧会では、膨大な作品群から精選した約100点の作品と、制作に打ち込む生前の姿を髣髴とさせるアトリエの再現や、
さまざまな写真・映像資料、愛用した道具などを立体的に展示し、紹介していきます。
展示品は、初めて一般に公開されるもので、その意味でも貴重ですが、
本展覧会は、自らの制作を決して芸術とは呼ばなかった宗教者、伊藤真乗の全体像を知る上でも、絶好の機会となるでしょう。
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